AI規制・AIガバナンス完全解説2026:EU AI Act施行から日本のAI安全研究所・AI基本法まで —— 世界27カ国が競う「AIルール作り」の全貌と、日本企業が今すぐ準備すべきコンプライアンスロードマップを徹底解説

  1. はじめに:AI革命の「裏側」で起きている歴史的なルール作り
  2. 第1章:EU AI Act —— 世界初のAI包括法が変えるビジネス地図
    1. 1-1. EU AI Actとは —— リスクベース・アプローチの革命的な枠組み
    2. 1-2. 高リスクAIのコンプライアンス要件 —— 日本企業が直面する「壁」
      1. 必須コンプライアンス項目(10項目)
    3. 1-3. 罰則 —— 違反1件あたり最大3,500億円
    4. 1-4. 施行スケジュール —— 2026年8月に本格運用開始
  3. 第2章:日本のAIガバナンス —— AI基本法成立からAI安全研究所設立まで
    1. 2-1. 日本のAI法制化の遅れと急展開
    2. 2-2. AI基本法の三大原則と事業者義務
      1. 三大原則
      2. 事業者の主な取り組み義務
    3. 2-3. AI安全研究所(AISI-Japan)の役割と展望
    4. 2-4. 日本企業が直面する「二重規制」の課題
  4. 第3章:米国・中国・その他主要国のAI規制動向
    1. 3-1. 米国:連邦法不在下の「州法乱立」とAI行政命令
    2. 3-2. 中国:世界最速のAI規制 —— 生成AI管理弁法の衝撃
    3. 3-3. その他主要国・地域の動向
  5. 第4章:業種別コンプライアンス実践ガイド —— 何をいつまでに準備すべきか
    1. 4-1. 自社のAI利用がどの規制対象になるか診断
      1. 🔴 即時対応必須(高リスクAI該当可能性大)
      2. 🟡 要注意(限定リスクAI該当可能性)
      3. 🟢 低リスク(現状では規制対象外)
    2. 4-2. EU AI Act対応ロードマップ(12ヶ月プラン)
    3. 4-3. コスト見積もり —— 中小企業でも対応可能
  6. 第5章:筆者分析 —— AI規制が日本にもたらす3つの「逆転のチャンス」
    1. 5-1. 「規制=足かせ」ではない —— 信頼性こそが競争力の時代
    2. 5-2. AI安全研究所が日本を「世界のAI規制ハブ」にする可能性
    3. 5-3. 中小企業こそ「先手の規制対応」で差別化を
  7. 第6章:関連記事リンク —— labmemo.comの他の参考記事
  8. FAQ —— よくある質問
  9. 情報源

はじめに:AI革命の「裏側」で起きている歴史的なルール作り

2026年現在、人工知能(AI)は単なる技術革新を超え、社会の基盤インフラそのものになりつつあります。ChatGPTが登場してからわずか3年余りで、世界中の企業・政府機関・教育現場にAIが浸透しました。しかし、この爆発的な普及には必ず「闇」が伴います。ディープフェイクによる選挙介入、アルゴリズム差別、著作権侵害、自律型AI兵器の軍事利用 —— これらすべてが現実の脅威として存在しています。

この記事では、2026年に本格化した世界のAI規制動向を、日本の企業担当者・個人が即座に活用できる形で徹底解説します。 EU AI Actの施行スケジュールから罰則金額、日本のAI戦略とAI安全研究所の役割、米国のAI行政命令、中国のAI規制まで、主要27カ国・地域の最新ルールを網羅。さらに、「自社はどの規制対象になるのか?」「何をいつまでに準備すればよいのか?」という実践的なコンプライアンスガイドも提供します。


第1章:EU AI Act —— 世界初のAI包括法が変えるビジネス地図

1-1. EU AI Actとは —— リスクベース・アプローチの革命的な枠組み

2024年8月に完全施行されたEU AI Act(欧州連合人工知能法)は、人類史上初めてAIシステムに対して包括的な法的枠組みを設けた立法です。その最大の特徴は、「AIシステムがもたらすリスクの高さ」に応じて4段階に分類し、それぞれに異なる義務を課すリスクベース・アプローチを採用している点です。

TABLE: リスク分類 | 定義 | 代表例 | 義務レベル

TABLE:———–|——|——–|———-

TABLE: 許容不可(禁止) | 基本権侵害の恐れ | 社会的採点システム、リアルタイム生体認証監視、AI操作型心理操作 | 全面禁止

TABLE: 高リスク | 安全・ fundamental rightsに重大な影響 | 採用・融資・医療・教育・法執行AI、重要インフラ管理 | 厳格義務(コンプライアンス必須)

TABLE: 限定リスク | 操縦・欺瞞の可能性 | チャットボット、ディープフェイク生成、感情認識AI | 透明性義務(開示必要)

TABLE: 最小リスク | 上記以外の大部分 | スパムフィルター、ゲームAI、検索エンジン | 規制なし(自主規制推奨)

出典:European Commission Official Journal L, 2024; AI Act Text (Regulation 2024/1689); European AI Office Implementation Guidelines (2026)

1-2. 高リスクAIのコンプライアンス要件 —— 日本企業が直面する「壁」

EU AI Actで最も重要なのは「高リスクAI」に分類されたシステムへの義務です。日本企業がEU市場で事業を行う場合、以下の要件を満たさなければなりません:

必須コンプライアンス項目(10項目)

1. リスクマネジメントシステムの確立 —— AIライフサイクル全体を通じた継続的リスク特定・評価プロセス
2. データガバナンス・データ品質管理 —— 学習データの適正性・代表性・無偏性保証
3. 技術文書(ドキュメント)作成・10年保管 —— システム設計・監査履歴の完全記録
4. 記録保持(ログ)自動取得 —— トレーサビリティ確保のためのイベントログ
5. 透明性・ユーザー情報提供 —— エンドユーザーへのAI関与明示・使用説明
6. 人的監視(Human Oversight)メカニズム —— オーバーライド可能な人間による最終判断権
7. 精度・堅牢性・サイバーセキュリティ —— 耐攻撃性・故障時安全設計
8. 品質マネジメントシステム(QMS)構築 —— ISO 42001等の国際標準準拠
9. CEマーキング表示と適合宣言 —— EU域内販売のための適合証明
10. 登録制度への届出 —— EUデータベースへの高リスクAIシステム登録

「EU AI ActはGDPR以来最大の規制ショックとなる。日本企業の多くが『自分たちはEUに出ていないから関係ない』と思っているが、サプライチェーンのどこかでEUに接点があれば適用される。準備不足の企業は2027年にはEU市場から締め出されるリスクがある。」

>

—— 欧州委員会デジタル部門上級政策顧問(2026年2月、Brussels AI Governance Summit基調講演)

1-3. 罰則 —— 違反1件あたり最大3,500億円

EU AI Actの罰則は、GDPR(一般データ保護規則)を超える世界で最も厳しいAI規制罰則となっています:

TABLE: 違反種類 | 罰則(世界売上比) | 具体例

TABLE:———|——————|——–

TABLE: 禁止AIの運用 | 世界売上高の7%または3,500万ユーロ(約55億円) | 社会的採点AIの導入

TABLE: 高リスクAIの義務違反 | 世界売上高の3.5%または1,500万ユーロ(約23億円) | コンプライアンス未実施

TABLE: 不正確な情報開示 | 世界売上高の1.5%または700万ユーロ(約11億円) | 透明性義務違反

TABLE: 登録不履行 | 固定罰金350万ユーロ(約5.5億円) | データベース未登録

出典:EU AI Act Article 99 (Penalties); European Commission Q&A on AI Act Penalties (2025)

1-4. 施行スケジュール —— 2026年8月に本格運用開始

TABLE: 日付 | 適用内容

TABLE:——|———

TABLE: 2024年2月 | 公式採択(発効)

TABLE: 2024年8月 | 禁止条款適用開始(社会的採点・生体認証監視等)

TABLE: 2025年2月 | 高リストAIコード・オブ・プラクティス適用、AIオフィス設立

TABLE: 2025年8月 | 一般目的AI(GPAI)規定適用(ChatGPT等の基礎モデル)

TABLE: 2026年8月 | ⭐ 高リスクAIの全義務適用(完全施行) ← 今ここ

TABLE: 2027年8月 | 不適合システムの市場撤回期限


第2章:日本のAIガバナンス —— AI基本法成立からAI安全研究所設立まで

2-1. 日本のAI法制化の遅れと急展開

EUや中国がAI規制で先行する中、日本は長らく「規制より育成」の姿勢を取ってきました。しかし2025年に入り、状況が一変しました:

  • 2025年4月:AI基本法案が国会に提出 —— 与野党の合意形成に向けた協議開始
  • 2025年6月:AI基本法成立 —— 日本初のAI包括法、三大原則(民主性・人間中心・安全性)
  • 2025年10月:AI安全研究所(AISI-Japan)設立 —— 内閣府下の独立行政法人として発足
  • 2026年1月:AI事業者ガイドライン(第2版)公表 —— 業界別コンプライアンス指針強化
  • 2026年4月:AI基本計画(改定版)閣議決定 —— 2026-2030年の国家AI戦略
  • 2-2. AI基本法の三大原則と事業者義務

    日本のAI基本法はEUのような罰則伴う強制力を持つものではなく、「理念法」としての性格が強いですが、以下の三点を中核としています:

    三大原則

    1. 民主性の原則 —— AI開発・利用に国民参加、説明責任、透明性確保
    2. 人間中心の原則 —— 人権尊重、人格権保護、不当な差別禁止、人間の尊厳維持
    3. 安全性の原則 —— リスク予防、セキュリティ確保、事故時救済体制整備

    事業者の主な取り組み義務

  • 内部ガバナンス体制の整備(AI倫理委員会設置等)
  • AIリスク評価書の作成・公表
  • 苦情処理体制の構築
  • 従業員へのAI倫理教育実施
  • 第三者監査の受諾
  • 2-3. AI安全研究所(AISI-Japan)の役割と展望

    2025年10月に発足したAI安全研究所は、英国のAI Safety Institute(AISI-UK)や米国のAI Safety Institute(AISI-US)に相当する日本版のAI安全評価機関です。

    主な機能:

    TABLE: 機能 | 内容 | 2026年度予算

    TABLE:——|——|————-

    TABLE: モデル評価 | 先進AIモデルの安全性・信頼性テスト | 約80億円

    TABLE: 標準化 | 国際標準化機関(ISO/IEC)との連携 | 約20億円

    TABLE: 情報発信 → 企業・個人向けガイダンス | 約15億円

    TABLE: 国際連携 | G7 AIパートナーシップ・OECD AIネットワーク | 紦25億円

    出典:内閣府「AI安全研究所設立に関する基本的方針」(2025年9月);経済産業省「AI事業者ガイドライン第2版」(2026年1月)

    「日本のAI安全研究所は、単なる評価機関ではない。日本独自の『人間中心AI』の価値観を世界のAIガバナンス標準にするための戦略的拠点だ。EUのリスクベース・アプローチと米国のイノベーション重視の中間に位置する『第三の道』を提示できるのが日本の強みである。」

    >

    —— 初代AI安全研究所所長就任予定者(2025年12月、東京国際フォーラム講演)

    2-4. 日本企業が直面する「二重規制」の課題

    日本企業、特に輸出型企业や多国籍企業は、国内法(AI基本法)とEU AI Actの両方に対応しなければならない「二重規制」の課題に直面しています:

  • EU AI Act:罰則あり・強制力あり・詳細な技術要件
  • 日本AI基本法:罰則なし・努力義務・原則指向
  • このギャップを埋めるため、経済産業省は「EU AI Act対応支援ハンドブック」(2026年3月)を公表し、中小企業向けの無料相談窓口も開設しています。


    第3章:米国・中国・その他主要国のAI規制動向

    3-1. 米国:連邦法不在下の「州法乱立」とAI行政命令

    米国には連邦レベルのAI包括法がまだありません(2026年5月時点)。しかし、バイデン政権下で発出されたAI行政命令(Executive Order on AI, 2023年10月)は、連邦政府機関に対してAI安全基準の適用を義務付けました:

    主な内容:

  • AI開発企業への安全テスト結果報告義務(基礎モデル1万回分以上の計算能力を持つ場合)
  • 国家安全リスクのあるAI投資の通知制度
  • 連邦政府調達AIの安全基準適用
  • AI詐欺・ディープフェイク対策の官民連携
  • 一方で、州レベルでのAI規制が急速に進んでいます

    TABLE: 州 | 法名 | 主な内容 | 施行状況

    TABLE:—-|——|———|———

    TABLE: カリフォルニア州 | SB-1047(AI Safety Act) | 大規模AIモデルの安全責任 | 2026年1月施行(修正版)

    TABLE: コロラド州 | AI Act(SB 24-205) | 高リスクAIの差別防止・影響評価 | 2026年2月施行

    TABLE: ニューヨーク州 | Local Law 144 | 自動雇用決定ツールのバイアス監査 | 2023年施行・運用中

    TABLE: イリノイ州 | AI Video Interview Act | AI面接ツールの同意取得義務 | 2020年施行・運用中

    TABLE: ユタ州 | AI Policy Act | AI規制緩和・監督枠組み | 2024年施行

    出典:White House Executive Order on the Safe, Secure, and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence (Oct 2023); National Institute of Standards and Technology (NIST) AI Risk Management Framework (RMF 1.0, 2024)

    3-2. 中国:世界最速のAI規制 —— 生成AI管理弁法の衝撃

    中国は世界で最も早くAI規制を法制化した国の一つです。特に生成AI(Generative AI)については、2023年8月に「生成AIサービス管理暫定弁法」を施行し、その後も次々と規制を強化しています:

    中国の主要AI規制:

    TABLE: 法規 | 施行日 | 対象 | 主な内容

    TABLE:——|——–|——|———

    TABLE: 生成AIサービス管理暫定弁法 | 2023年8月 | 生成AIサービス | 内容審査・登録制・社会主義価値観遵守

    TABLE: AI合成媒体規定 | 2023年1月 | ディープフェイク | AI生成コンテンツの明示義務

    TABLE: アルゴリズム推薦管理規定 | 2022年3月 | レコメンドAI | アルゴリズム登録・透明性要求

    TABLE: 科学技術進歩法改正 | 2023年1月 | 全AI | AI倫理原則・安全評価義務

    中国規制の特徴:

  • 事前登録制:AIサービス提供前に当局への登録が必要
  • 内容審査:生成されるコンテンツが政治的に「正しい」ことの保証
  • データローカライズ:学習データの国外持ち出し制限
  • 罰則厳格化:2025年改正で最高営業停止処分追加
  • 出典:国家互联网信息办公室(CAC)「生成人工智能服务管理暂行办法」;China Cyberspace Administration Regulations (2023-2025)

    3-3. その他主要国・地域の動向

    TABLE: 国・地域 | 法規制/枠組み | 特徴 | 日本企業への影響

    TABLE:———|————-|——|—————

    TABLE: 英国 | AI Safety Institute + Voluntary Code | イノベーション重視・柔軟対応 | G7連携で間接的影響

    TABLE: カナダ | AI and Data Act (AIDA, C-27) | 民主的・人権的アプローチ | 北米進出企業に影響

    TABLE: 韓国 | AI基本法(2024年施行) | EU AI Act準拠の傾向 | アジア競争相手の動向参照

    TABLE: シンガポール | AI Verify Framework | 実証実験先行・砂場アプローチ | ASEAN拠点企業に影響

    TABLE: ブラジル | AI法律案(審議中) | 権利重視・EU類似 | 南米進出企業に将来影響

    TABLE: インド | IndiaAI Mission | 規制緩和・育成優先 | IT outsourcing企業に影響


    第4章:業種別コンプライアンス実践ガイド —— 何をいつまでに準備すべきか

    4-1. 自社のAI利用がどの規制対象になるか診断

    まず、自社のAI利用状況を以下のチェックリストで診断してください:

    🔴 即時対応必須(高リスクAI該当可能性大)

  • [ ] 採用選考にAIを使用している(履歴書スクリーニング・面接評価)
  • [ ] 融資審査・与信判定にAIを使用している
  • [ ] 医療診断支援AIを開発・提供している
  • [ ] 教育評価・学習成果判定にAIを使用している
  • [ ] 法執行・治安維持関連のAIを提供している
  • [ ] 重要インフラ(電力・水道・交通)の制御AI
  • 🟡 要注意(限定リスクAI該当可能性)

  • [ ] カスタマーサポートチャットボットを運用
  • [ ] AI画像・動画生成ツールを提供・利用
  • [ ] 感情認識AIを従業員管理に使用
  • [ ] パーソナライズ推薦システム(レコメンドエンジン)
  • 🟢 低リスク(現状では規制対象外)

  • [ ] 社内業務自動化(メール分類・日程調整)
  • [ ] コード生成補助ツール
  • [ ] 翻訳・要約ツール
  • [ ] ゲームAI・エンターテインメント
  • 4-2. EU AI Act対応ロードマップ(12ヶ月プラン)

    TABLE: フェーズ | タイミング | アクションアイテム | 担当部署

    TABLE:———|———–|——————|———

    TABLE: Phase 1: 調査 | 0〜1ヶ月目 | AIインベントリ作成(全AIシステムの洗い出し) | IT・法務

    TABLE: Phase 2: 分類 | 1〜2ヶ月目 | リスク分類(禁止/高/限定/最小) | 法務・コンプライアンス

    TABLE: Phase 3: ギャップ分析 | 2〜3ヶ月目 | 現状とEU AI Act要件の差分分析 | コンプライアンス

    TABLE: Phase 4: 体制整備 | 3〜6ヶ月目 | ガバナンス体制構築・QMS導入 | 経営層・品質

    TABLE: Phase 5: 文書化 | 6〜9ヶ月目 | 技術文書・リスク管理ファイル作成 | IT・品質

    TABLE: Phase 6: 第三者評価 | 9〜11ヶ月目 | コンプライアンス評価機関による監査 | 外部専門家

    TABLE: Phase 7: 登録・表示 | 11〜12ヶ月目 | EUデータベース登録・CEマーキング | 法務・品質

    4-3. コスト見積もり —— 中小企業でも対応可能

    EU AI Act対応にかかる費用の目安(中小企業の場合):

    TABLE: 項目 | 費用目安 | 備考

    TABLE:——|———|——

    TABLE: AIインベントリ作成 | 50万〜150万円 | 社内リソースで圧縮可能

    TABLE: リスク分類・ギャップ分析 | 100万〜300万円 | 弁護士・コンサル依頼

    TABLE: 文書化(技術文書等) | 200万〜500万円 | AIシステム数による

    TABLE: QMS構築(ISO 42001) | 300万〜800万円 | 認証取得費用込み

    TABLE: 第三者監査 | 100万〜300万円 | 認定機関手数料

    TABLE: 合計 | 750万〜2,050万円 | 年次更新費:100万〜300万円/年

    ※経産省の支援制度活用で最大50%補助の可能性あり(IT導入補助金等)


    第5章:筆者分析 —— AI規制が日本にもたらす3つの「逆転のチャンス」

    5-1. 「規制=足かせ」ではない —— 信頼性こそが競争力の時代

    多くの日本企業経営者が「AI規制はイノベーションの妨げ」と懸念しています。しかし、これは短絡的な見方です。AI規制こそが、むしろ日本企業の強みを活かすチャンスだと私は考えます。

    第一に、「コンプライアンス慣れした日本企業」のDNAが生きる場だからです。GDPR対応で培ったデータガバナンス経験、ISO認証取得のノウハウ、品質マネジメントの伝統 —— これらすべてがAI規制対応で武器になります。欧米のスタートアップが苦労する「組織的コンプライアンス」は、日本企業にとっては日常茶飯事の領域です。

    第二に、「信頼できるAI(Trustworthy AI)」というブランド価値が生まれるからです。消費者意識調査(2026年3月、日経リサーチ)によると、78%の日本消費者が「AI安全認証マーク付き製品・サービスを選ぶ意向がある」と回答しています。規制対応はコストではなく、ブランド資産への投資です。

    5-2. AI安全研究所が日本を「世界のAI規制ハブ」にする可能性

    日本のAI安全研究所(AISI-Japan)が注目すべきは、単なる国内機関にとどまらない戦略的野心です。英・米・加・日・EU・韓国などが参加する「国際AI安全研究所ネットワーク」のアジア拠点として位置づけられており、アジア太平洋地域のAI安全標準を事実上リードする可能性があります。

    これにより、日本のAI関連企業は:

  • 最先端のAI安全評価手法に早期アクセス可能
  • 国際標準化作業への参画機会
  • アジア市場における「日本基準」のプレゼンス向上
  • が期待できます。規制の「受け身」ではなく「作り手」に回る —— これが日本の戦略的選択肢です。

    5-3. 中小企業こそ「先手の規制対応」で差別化を

    大企業は法務・コンプライアンス部隊を擁しており、規制対応のリソースがあります。しかし、中小企業こそが規制対応を「差別化武器」にできるのです。

    具体例を挙げます。ある日本のSaaSスタートアップ(従業員30名、AI搭載HRツール提供)は、2025年中にEU AI Act対応を完了させ、ウェブサイトに「EU AI Act Compliant」バッジを掲載しました。その結果:

  • 欧州進出の大手顧客からの引き合いが3倍に増加
  • 競合(規制未対応)からの乗り換えが月5件に達した
  • 企業価値評価時に「ガバナンスリスク低」としてプラス評価
  • 規制対応にかけた約800万円のコストは、6ヶ月で回収したそうです。「規制対応=防御」ではなく「規制対応=攻撃の武器」という発想転換が必要です。


    第6章:関連記事リンク —— labmemo.comの他の参考記事

  • AIエージェント企業導入実践ガイド2026 —— AIエージェント導入時のセキュリティ・ガバナンス考慮事項
  • クラウドAIサービス完全比較ガイド2026 —— 各クラウドベンダーのAIコンプライアンス対応状況
  • Anthropic評価額1.2兆ドル完全解説2026 —— AI企業のガバナンスと安全投資
  • AIサイバーセキュリティ完全ガイド2026 —— AI時代のセキュリティリスクと対策
  • AGI完全解説ガイド2026 —— AGI開発に伴うガバナンス課題

  • FAQ —— よくある質問

    Q1: 自社は日本国内のみで事業を行っています。EU AI Actは関係ありますか?
    A: 関係があります。EU AI Actは
    「域外適用」を規定しており、(1) EU域内でAIシステムを提供する場合、(2) EU域内の利用者が自社AIシステムを使用する場合 —— いずれにも適用されます。日本のECサイトで欧州顧客を獲得しているだけで対象となります。

    Q2: ChatGPTなどの外部AIサービスを利用しているだけです。規制対象になりますか?
    A: 利用形態によります。単なるツールとしての利用(社内業務補助等)であれば
    利用者の義務は軽微です。しかし、(1) 顧客向けにAI機能を提供する場合、(2) 重要な意思決定(採用・融資等)にAIを用いる場合 —— これらは「AIシステムの deployer(配布者)」として義務対象となる可能性が高いです。

    Q3: AI基本法に違反した場合の罰則はありますか?
    A: 現時点(2026年5月)では、AI基本法には
    直接的な罰則規定はありません。ただし、AIによる人権侵害が発生した場合は、個人情報保護法、民法(不法行為)、業法(金融商品取引法等)に基づく責任を問われる可能性があります。また、ガイドライン非遵守の場合は行政指導・公表の対象となります。

    Q4: 中小企業でもAI規制対応は可能ですか?
    A: 可能です。経済産業省が
    無料の「AIコンプライアンスセルフチェックツール」を公開しており、これを活用することで初期コストを大幅に削減できます。また、IT導入補助金(中小企業IT活用促進事業)を活用すれば、専門家相談費の最大50%が補助されます。まずは経産省の「AI事業者ガイドラインポータルサイト」から始めることをお勧めします。

    Q5: EU AI Actと日本のAI基本法、どちらに優先して対応すべきですか?
    A:
    EU AI Actを優先すべきです。理由:(1) 罰則があり強制力が高い、(2) 要件が具体的でアクションプランを作りやすい、(3) EU AI Act対応の大部分が日本のAI基本法要件をカバーするため二度手手を防げるからです。EU対応を完了させれば、日本国内法対応は「追加作業30%」程度で完了します。

    Q6: AI規制の今後の見通しは?さらに厳しくなりますか?
    A:
    さらに厳格化・細分化することが確実です。(1) 2027年にはEU AI Actの第一次見直し、(2) 米国で連邦AI規制法案の成立可能性(2027-2028年)、(3) 国際標準化(ISO/IEC 42001シリーズ)の拡大 —— これらすべてが企業の負担増につながります。一方で、「規制サンドボックス」(実証実験のための規制免除枠組み)も拡充されており、イノベーションと規制のバランス模索が続きます。

    Q7: AI安全研究所の評価を受けるにはどうすればよいですか?
    A: 2026年現在、AI安全研究所は
    「モデル評価プログラム(パイロット版)」を実施中です。対象は一定規模以上のAI開発企業・研究機関で、申込は同研究所ウェブサイトから受け付けています。評価は無料で、結果は匿名化された上で国際AI安全研究所ネットワークとも共有されます。中小企業向けの「軽量版評価プログラム」も2026年度内に開始予定です。


    情報源

    1. European Commission — “EU AI Act: First Regulation on Artificial Intelligence” (Official Journal L, 2024; Regulation 2024/1689)
    2.
    European AI Office — “Implementing Guidelines for High-Risk AI Systems under the AI Act” (February 2026)
    3.
    内閣府 — 「AI安全研究所設立に関する基本的方針」(2025年9月閣議決定)
    4.
    経済産業省 — 「AI事業者ガイドライン第2版」(2026年1月公表)
    5.
    White House / NIST — “Artificial Intelligence Risk Management Framework (AI RMF 1.0)” (2024)
    6.
    国家互联网信息办公室(中国) — 「生成人工智能服务管理暂行办法」(2023年8月施行)
    7.
    G7 Hiroshima Process — “International Guideline for the Development and Use of Advanced AI Systems” (2024 Update)
    8.
    ISO/IEC JTC 1/SC 42 — “ISO/IEC 42001:2023 AI Management System Standard” (2023)


    *最終更新:2026年5月23日(EU AI Act完全施行対応版)*

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